1、ご挨拶
聞き手は、ラカン精神科学研究所の宣照真理さんです。
惟能先生と宣照さんと私(編集部A)のプロフィールは下記の通りです。
惟能創理(いのうそうり)
日本初のインテグレーター(精神分析家)
宣照真理のスーパーバイザー
編集部A(へんしゅうぶえー)(略称)
月刊精神分析(げっかんせいしんぶんせき)編集部員A
1963(S.38)年3月12日生まれ
出身:福岡県福岡市。
コンピューター会社のシステムエンジニア。食品工場の生産管理業務に従事。
飲食店の経営を経た後、月刊精神分析編集部。
宣照真理(せんしょうまり)
精神分析家。ラカン精神科学研究所(滋賀県大津市)主宰。
1958(S.33)年4月22日生まれ
出身:滋賀県大津市。二女の母。
親和女子大学児童教育学科(兵庫県神戸市)卒業。
lacan_msl☆yahoo.co.jp

2、無意識とコンプレックス
私の場合、30歳頃から軽いパニック障害を経験しました。閉所や自由に動けない環境で急に息苦しくなったり不安な気持ちが込み上げて来るのです。精神分析の知識を得て、自己分析をし、それは詰まるところ自分のコンプレックス(観念複合体)だと分かりました。
3、無意識の形成
実は私は、先日、夜中に『余命1ヶ月の花嫁』と言うドキュメントTVをみていました。と言うか、たまたま付けっぱなしのテレビ画面を寝ぼけたままみていたのですが、癌と闘病する女性、そして女性の花嫁姿とすすり泣く父の姿が画面に映りました。・・するとなぜが妙に圧迫感を感じました。呼吸が苦しくなります。ふつふつと湧いてくる不安感。誰かに助けを求めたくても深夜のビジネスホテルの一室。どうする事もできない・・・と言うようなパニック障害の発作が起きてしまいました。これは、自己分析するに、父との関係をコンプレックスに持つ自分の無意識が刺激された結果、起こった発作だと思われます。
私は子どもの時、母に構ってもらえず母と切り離された生活を送っていました。当時、母は小学校の先生をしており常に家にいませんでした。結果、私は独りで何でもやる子どもになっていました。
精神分析を受けてわかった自分の幼年時代の心のあり方は次のようでした。
私は母と一緒にいたかった。母に甘えたかった。でも、母はいつも居なくて寂しかった。求めても得られなかったら諦めるしかない。その途轍もない寂しさを自分で受け留めきれずに、母と一緒にいたかった自分さえも無かった事にしました。私は母を諦めて、更に母を諦めた自分さえも無かった事にして無意識に隠蔽したのです。
この瞬間「私は独りの方がいい。私は独りで何でもできる」・・。私は自分をそう思うことにしました。
自分が諦めた事を他者(特に子ども)から求められると、その要求には応えられません。私の無意識の中のコンプレックスが刺激されます。娘達が私に甘えてくると腹がたつしイライラします。娘達が一緒に何かをしたがっても突き放したくなる「自分一人でやればいいでしょ」と言ってしまいます。
当時の私を娘は「アホみたいに怒っとたな」と言います(笑)。
4、無意識の意識化
ネットで「無意識の意識化」を検索するとその方法として「夢分析」や「自由連想法」が出てきます。
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夢分析:精神分析学の理論では、夢の世界は無意識が意識に混入してくるため、意識の側から無意識を理解するのに適している。
自由連想法:精神分析の中心技法。被分析者は頭に思い浮かぶ言葉をそのまま口にする。しかし、抵抗が生じてなかなか自由に連想を語ることは難しい。分析家はこの抵抗を足がかりに解釈を行う。
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・・という説明文がでてきますが・・
5、無意識の書き換え
私自身を例にすれば、私の無意識は私の意識を「独りが楽」と言う意識にしていました。その私の無意識は「母を求められなかった幼年時代の私の意識を抑圧した無意識」でした。「母を求められなかった私は母を諦め、更に母以外の人間関係も諦めた」という事がわかりました。この時点で無意識は意識化されました。この次が「書き換え」です。
「私は本当は母を求めていたし、本当は、人間関係も求めていたんだ。人間関係の第一歩である母との関係でつまずいたために、それ以後の人間関係までも結ぼうとしなかったんだ。ならば、今からもう一度、人との関係をみなおし、結んでいこう。人って案外おもしろいかもしれない。」・・この時点で無意識→意識化→書き換え・・ができました。私の意識の変化は、現実の生活も変化させ、私は人間関係を求め始めました。学生時代に打ち込んでいたバスケットボール競技への再開もその一つだったんだと思います。・・・所謂、「思考は現実化する」という事ですね。
そして、私自身の子育てに纏わるイライラ感ですが、娘は私から見ると「母を諦める以前の母を求めていた私じゃないの・・・」と気付きました。母を求めていたが、それをあきらめた私をしっかり意識化することで、イライラ感は解消していきました。私と一緒にいて喜んでいる娘の顔をみて喜べる私になりました。喜んでいる娘は、私が子どもの頃に本当は味わいたかったこと。こうして自分自身をも救い上げたのです。
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今の私を知らなければ、未来に向かって投企するすることも努力することもない。何故ならば、自己理想をもつことができないからである。自己実現すべき自己の理想的姿は、今の私との差異によって生み出されるものだから。今の私を知らずして自己理想を語るのは、絵に描いた餅である。具現化するための具体的努力をすることはできない。それは、今を理想像と比較参照したときに、今何が足りないかが判るからである。その欠如に気づかない限り人は努力をしない。
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①育児を通して自分を振り返るため。我が子を世話し、育てながら、きっと自分の母もこうして自分を世話し育てたのだろうと、自分の育てられた過程を想像し、自分を知る手がかりとなる。
②自分を理想的に育てなおす為。母は100%良い母ではないため、不適切であったり、人によっては子どもを叩いたりした。子どもとして傷ついたり、不満・欠如を持って生きてきた子ども時代の自分がいる。それを今度、自分の子どもを理想的に育てる。そうすることで、自分を理想的に育てなおすことにもなる。
詳しくは「オールOK!子育て法」のサイトを参照して下さい。
6、養育史
京都大学教授で精神医学者の新宮一成さんが書かれた『ラカンの精神分析』(講談社現代新書、1995年)には以下の様に書かれています。
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フロイトの『夢判断』の中に、「子供時代は、そのものとしては、もう無い」という一句がある。それに続けてフロイトは、「それは夢や転移によって、代理されている」と付け加えている。何気なく書かれたこの一句に、重大な発想の転換が刻み込まれている。
我々の記憶をさかのぼってゆくと、どこかでそれは切れてしまう。自己の誕生を記憶している人はいない。にもかかわらず我々は、誕生以来の同一性を信じている。最早期のことを思い出せないのは、たまたま忘れているだけだといった風に生きている。しかし、私の今の身体が、私の父と母の手の中で赤ん坊であった一つの存在とつながっているということを、私自身はもはや経験することができないのである。
この不可能性を、現実のものとして受け止めること、そこから精神分析は出発する。フロイトが、「子供時代は、もう無い」と宣言するのはそのためである。無くなった子供時代は、象徴によって我々の無意識を形成している。夢や転移は、まさにそういった象徴の系である。そして、私が私の根拠を、あくまでも内的に求めようとする限り、私は、この象徴の系の内側にとどまりながら、探求を進める他はない。
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0歳から4歳くらいまでの間に、人間の精神の基礎ができてしまうといっても過言ではありません。しかしまた、この時期の記憶が我々にほとんどないということが、人間の精神、意識・無意識をより厄介なものにしていると思います。この時期がそんな大事な時期とも知らず、結構なおざりにされているのではないでしょうか。
子ども時代に形成した無意識が、今の私達のあり様に大きな影響を与えています。無意識に気付かなければ、現実も夢も境がなく、夢遊病者のようなものです。無意識のままに夢遊病者のように生きて、それで本当に生きたといえるでしょうか。真に目覚め、自らの意思で自分の人生を有意義なものにしたいものです。
人間とコンピューターを対比させるとこんな感じです。図参照。

WordやExcelを使って作業をする時は深くOSの存在は意識していませんが、WordやExcelはWindowsというOSの上で動いています。こんな関係性も「意識」と「無意識」の関係に似ている様な気がします。
興味深いので仏教用語もあわせて掲載してみます。無意識は「阿頼耶識」と表現されているようです。Wikipediaの説明を引用すると、
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阿頼耶識(あらやしき)は、大乗仏教の用語。唯識思想により立てられた心の深層部分の名称であり、大乗仏教を支える根本思想である。眼識・耳識・鼻識・舌識・身識・意識・末那識(まなしき)・阿頼耶識の8つの識のうち第8番目で、人間存在の根本にある識であると考えられている。
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と記載されており、五感+意識+末那識+阿頼耶識=「八識」という心の機能という事です。覚えておいても損はないでしょう。
人間は言葉によって意識付けして意識や無意識を構成しています。
当然、日本人は日本語によって意識を構成します。これって、日本人が使うパソコンのOSはWindowsXP(日本語版)を使うのと一緒ですよね。笑。日本人も欧米人も生物学生理学的には同じ脳を有している筈なのですが、精神(意識や無意識)は、各々の言語で構成されるのです。この事実を垣間見ても、心の病を治すのには必然的に言葉を使う(対話する)のは当たり前に様な気になってきます。
因みに人はいつから言葉を理解しているのでしょうか?実は、人は既に胎児の時に腹の中で母親の環境音を聴いているというレポートがあります。
最近私が読んだ書籍を紹介しますと、池谷裕二さん(海馬の研究を通じて、脳の健康や老化について探究している)が書かれた「怖いくらい通じるカタカナ英語の法則」(講談社:2008年)という本の理論辺には以下の記述があります。
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脳波測定器で生後2~5日の赤ちゃんの脳を調べたところ、この時期すでに正しい母国語と誤った母国語を聞いた時で左脳の反応が違っていたのです。(中略)この実験データを説明する仮説の1つとして「生まれる前にお母さんのお腹の中で言葉をきいていた」という可能性が考えられます。
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と明記してあります。人は生まれる以前から言葉を聴いている可能性があります^^。
7、統合・構成・・インテグレート
また例えは、日本では精神疾患の病名の1つに「統合失調症」と言うのがあります。
Wikipediaによると
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医学が進歩した今日でもなお治療が困難な病である。もともと明治時代にドイツ語の(Schizophrenie)を翻訳して「精神分裂病」としていた。ところが、「精神分裂病」という名称が日本では「精神が分裂する病気」→「理性が崩壊する病気」と誤って解釈されてしまうケース(統合失調症患者であっても、理性が崩壊するとは限らない)が見られた。患者・家族団体等から病名に対する偏見が著しく強いという苦情が多かった。そこで、2002年に日本精神神経学会総会によって英語のschizophreniaに対する訳語を「統合失調症」にするという変更がなされた。
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という説明がしてあります。
インテグレーター養成講座の無意識論には次の記述がありますので紹介します。
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個性化の目的は、人間が本来もっている自発的な全体性への志向を補償によって無意識を意識化して、自己自身に内在する意味と意識を自己の全体性のかなに布置し、最終的に自己を統合することである。これが自己になる、すなわち「自己実現」と呼ばれる内容である。世界で宇宙で唯一、一人の自己になることに向かっての自己との闘いこそ、人間の人生の目的であろう。それが自己を知るということでもある。個性化の過程に対話の相手として現れ、自己実現へと導くのが、インテグレーターの仕事である。心の全体性へと統合していく分析こそ、インテグレーターのもつ人間観である。
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インテグレーターとは、バラバラに解体された自我を一人の人の自己として統合する人ということです。
統合された人は、バランスよく人生を楽しめると思います。
8、終わりに
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「運命」とは無意識の別名であり、その人が歩んだ軌跡を見て、人はそれをその人の「運命」といいます。人の行動を決めるのは、その人の心であり、人は心のままに行動します。ですから心にプラスのイメージや思考を持つことができれば、プラスの現象が現われ、マイナスのイメージ・思考しか持てなければ、マイナスの事象が現象化することになります。「思考は物質化する」といえ、全ては我が心です。ではなぜマイナスのイメージ・思考を心の内に持ってしまうのか、その原因を探りつつ、コンプレックスを解消し、様々な防衛機制を駆使しバラバラに分割したり、排除したりした自我を統合し、それらがうまく機能するようにしていくのが、分析の仕事です。
「運命」は決められたものではなく、自分で切り開くものです。しかし、ほとんどの人がその方法を知らず、悩み苦しみ、あきらめてしまっているのではないでしょうか。自分と向き合う勇気と、強い意思をもって取り組めば、必ず道は開かれる。幸せへの道はそこにある。
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