(以下の文章は、クライアントの了解を得て掲載しています)
講座の内容を録音するために、クライアントがICレコーダーを買ったという。
夫に頼んで買ってきてもらい、夫が説明書を読んでクライアントに説明してくれた。
「ふん」「ふん」「それで、どうするの」とICレコーダーに手を伸ばそうとすると、夫はクライアントに触らせないかのようにICレコーダーを遠ざける。
それが何度かあり、「あれっ?」とクライアントは思った。
クライアントの中で、「なぜ?」の問いかけが始まる。
手にとって、実際に操作してみないとわからないのに、何で夫は自分に触らせないのか。
クライアントいわく、夫は自分が得た知識や経験したことを人に教えるのが下手、夫も物を人に教えることが嫌いと言う。
夫はけちで、人に自分が苦労して得た事を教えるのが嫌いなんだと、クライアントは言う。
「それは何でだろう?」また問いかける。
夫の養育史、家庭環境を考え、優秀なお兄さんと格闘してきたことを思うと、こうなるかもと思った。
しかし前なら、まず夫のものの言い方、態度(触らせない)にカチンときて、それを責めていた。
ところが、今はそれが起きない。
それより、「なぜ、こういう言動をとるのだろう?}に意識が行く。
いろんなことを合わせ考えて、「こういう可能あるよな、それならこうなっても仕方ないかも」と思うと、腹立つ人(夫)が、案外いとおしくなる。
さらにクライアントは考えた、今まで夫の気に入らない言動を攻め立ててきたけれど、これってもしかしたら、自分の母親が父親にガミガミ言っていた口調と同じじゃないか。
自分ひとりが頑張っていることで、この家がもっているかのような言い方をする母の言葉を、小さい頃から聞いてきた。
決して良い気持ちはしなかったのに、自分も夫にそうしてきたかもしれない、と思うと恐いと言った。
よくこのクライアントは自ら気がついてくれた。
子どもであった私たちは、こうして親からの影響を受けている。
もっと言えば、親のコピーとなって生きている。
自分は違うと思っていても、親の夫婦関係を再現している可能性は大きい。
それとともに、夫婦共謀が止まらない。
例えば、夫からすれば「お前がこの家を一人できりもりし、頑張るから俺は頑張らなくてもいいやろ」
妻は妻で、「あんたが頼りないから、私が頑張るしかない」
これで夫は何時までたっても、男性性を発揮できず、妻の影に隠れ人としても成長できない。
妻も、男勝りで夫をけなし、共に協力して家庭を営むことができない。
共謀は必やがて行き詰まる。
その裏には、夫婦互いの克服されていない早期幼児期の外傷状況や葛藤がある。
これを分析によって見ていき、明らかにすることで、夫婦の共謀、葛藤は止まる。
そこに気が付きだしたクライアントの一例である。
(夫婦関係の精神分析 /ユルク・ヴィリィ /法政大学出版局 を参照
またはインテグレーター養成講座 「夫婦共謀」で解説)
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