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分析家の独り言 54 (言葉と信頼)

クライアントの中には、頭で思ったことを言語に置き換えて人に伝えるのが苦手な人がいる。
あるクライアントは、思うことはあるが、それが言葉に変換しにくく、言葉が出にくい。
そういう場合は分析家が、「例えばこういうことではないですか」と考えられる可能性のある答えなり、考えをいくつか用意して尋ねることになる。
ぴったりとまでいかなくても、近いところで大まかにつかみ、さらにつめていき、クライアントが言わんとするところを一緒に探し明らかにしていく。
大変根気のいる作業ではあるが、それによってクライアントをよりよく理解していく努力をする。
言葉を出しにくいその裏には、やはり丸々の受容がなかった養育史がある。
何かを言う前から、拒否されたとき自分が傷つかないような予防線を張った言い方を考えてから言う。
そこではきっと、すごく頭を働かせているはず。
しかもそれは非常に疲れるだろう。
ストレートに感情や言葉が出せないで、苦労している姿がうかがえる。
だからせめて、分析者には何の気遣いも、心配もなく思ったことがそのまま言えるようになってもらうこと。
分析場面でその練習をしてもらい、出すことはいいこと、心地よいことを体験してもらう。
それにはクライアントとの信頼関係が何より大事になる。
分析初期、この信頼関係を築くことに時間が費やされるといっても過言ではない。
心を許し、何でもいえる関係を作ること、それは本来子ども時代に親特に最初は母親と学習することである。
フロイトがいう口唇期における基本的信頼を学ぶこと。
それがないところからスタートするため、クライアントは分析対象者というよりは教育対象者であり、母に成り代わって育てていく過程が必要となる。
分析を重ねていくと、最初は「はい」と「いいえ」さえも聞こえないくらいの小さい声と、言葉しかでなかったのが、長文で答えてくれるようになり、それはまるで、子どもが言葉を覚えていく過程のようにも思える。

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2007年12月30日 10:24に投稿されたエントリーのページです。

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