(以下は分析家仲間の金谷氏のHPにある金谷氏の今月のメッセージを私のブログで紹介しているものです。)
日本最古の文献「古事記」と言う歴史書がある。
昔は、文字を読み書きすると言うことは、ほんの一握りの人だけしか出来なかった。
歴史はほとんどが言い伝えで、それぞれが自分たちの都合の良いように作り上げている物がほとんどである。
それを壬甲の乱に勝利した天武天皇が国史の編修に着手され、勅命によりこれまで混乱していた言い伝え等を一つにまとめ、天皇中心とする日本統一の由来を正しいも
のにしてあげた。
これに携わったものは、稗田阿礼(ひえだのあれ)であり、この人は記憶力がずば抜けていてすべての歴史を語れる人であった。
その後一時編修が中断されていたが、元明天皇の勅命により太安万侶(おおのやすまろ)が撰録し、712年に献上された。
上・中・下の三巻で、天地開闢から推古天皇までの記事が納められている。
驚いたのは、稗田阿礼が記憶していた物を語り、それを太安万侶が書き留めていくと言う作業工程により作り上げたと聞き甘心した。
ただ文字が統一されていない時代なので、中国伝来の漢文方式やら・例えば「芽出度」(めでたし)の様な当て字等が混合して書かれている。
何故、今「古事記」を取り上げたのか・・・・
我々が目指しているラカンは「語る言葉」と「書く言葉」と言う表現を使い、精神分析は「語る」事を中心に行う。
分っている事・終わっている事はすんなりと語れる。しかし、我々は語れない部分に着目し何故語る事が出来ないのかを分析する。
なぜ語れないのかは、養育者によって書き込まれていて「刻印」されているからである。
稗田阿礼のように確実に語ってくれた事が書き込まれていればいいのだが、言葉も文字も知らない時代(幼少期)に書き込まれているが故に、当て字を解明していくがご
とく分解していかなければ理解できない。
書き込まれた文字の意味とか音の響きとかと言うものを本人自身に聞いてみなければならない。
それを分析では「連想」という。フロイトが発見した方法でせまっていく。
語られた物は書き込んであるが故に分りにくいし、解明に時間がかかる。
例えば「お前は何も出来ない」と語られたとする。それを書くのには「私は無能者で役立たず」と変ってしまう。
分析者は、クライアントが「私は無能者で役立たず」と書き込まれたと表現するが、そのままの言葉では決して言われてはいない。
親は叱咤激励するつもりでわが子に「あの子に負けている・なさけない・がんばりなさい」と言う。
しかし、それを言われた子供は「自分はあの子より劣っているダメな人間だ」と受け取ってしまう。
古事記の様に後世に正しく伝えようと語る言葉を正しく書き込んで行った二人の偉人の様に、人間は正しく心に刻むことが出来たなら破綻するようなことはない。
光母子殺傷事件で犯行当時18才だった元会社員(27)の彼は、弁明するに「甘えようとして誤ってしなせてしまい、生き返らせようと強姦した・・・」
殺した後押入れに入れたのは「ドラえもんがなんとかしてくれると思った」等・どういう風に書き込まれたらこんな事が法廷で堂々と述べられるのか。
それを許した弁護士団も死刑反対という事は理解できるものの、こんな低俗な発言をさせて罪を軽減させようとした軽率な行動に、言葉で人を救う仕事に自覚と誇りはある
のかと問いたい。
金谷精神療法研究所
所長 真理攫取